諏訪哲史

March 04, 2009

ひっくりかえる登場人物

LISTENりすん
著者:諏訪 哲史
販売元:講談社
発売日:2008-04-26

 

 

 

 

アサッテの人」に熱中して、次作が本作である。神話構造とは、神さまがヘリコプターから、山へ芝刈りにいったお爺さんと川へ洗濯にいったお婆さんを同時期に眺めながら書いたものである。

現代文学 サルトル、三島由紀夫の世界は、自分がドアノブを開けたり、飲んだ水がヒヤッとしたりするところから始まった新しい表現方法だった。つまり物語の語り手が神さまから人になったのだ。

一方で、本作は登場人物が自分たちが作者の意図によってここにいるのかアサッテにいるのか判然としない。そしてその煩悶の中で物語は進行する。

画期的で斬新な文学体験ができる貴重な作品。



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September 08, 2007

ポンパッなチューリップ男の欲望

アサッテの人
久しぶりに衝撃的な文芸作品に出遭った感じである。失踪した叔父の手記を元に語り手であるはずの甥の「私」がいつのまにか、失踪した叔父を題材にフィクションを書き始めるが、いつしか叔父の手記から文体にまで影響をうけはじめ、完成を断念する小説である。

作品の多重構造の割には語り口はシンプルで読者をグイグイ引き込んでいく。物語の先が気になる精緻な作品だった。

■諏訪 哲史(すわ てつし、1969年 - )=小説家。2007年、「アサッテの人」で第137回芥川龍之介賞受賞。

1969年、愛知県名古屋市に生まれる。
愛知県立名古屋西高等学校、國學院大學文学部哲学科卒業。
大学在学中より種村季弘に師事。
2007年、退職し2年間引きこもった末に書き上げた「アサッテの人」で、第50回群像新人文学賞を受賞し小説家デビュー。さらに第137回芥川龍之介賞を受賞する。この2つの賞の同時受賞は村上龍以来30年ぶりである。



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