July 22, 2012
『ヘルタースケルター 』 (岡崎京子)の“美”と『洗礼』(楳図かずお)の“醜”
監督 蜷川実花
原作 岡崎京子
出演者 沢尻エリカ、寺島しのぶ、水原希子、桃井かおり
配給 アスミック・エース エンタテインメント
話題の映画をみてきた。映画の内容や出来を云々する意味はなさそうな映画だった。言ってみればイベントムービーやね。だから、ツッコミながらみると面白い。
岡崎京子の原作漫画は、1996年まで『FEEL YOUNG』(祥伝社)に連載されていたものである。つまり今回の映画化まで16年の月日がたっている訳で、整形に対する世間の感覚も違うから、原作に忠実に映画化すると、もう内容理解のリアリティが完全に欠如してしまう。
今日話題になっていたが、2012ミス・コリアの整形疑惑に対して、「最初から天然なんて言ってない」と発言し、むしろ清々しく受け止めるむきさえある。ましてや、現代の整形技術の進歩でマンガのような副作用もリアリティが薄くなったと思う。だから、この映画の方は21世紀に「巨人の星」をギャグっぽく扱うのと同じで、沢尻エリカの裸を堪能していればよろしい。
さて、今回取り上げたいのは、岡崎京子が「ヘルタースケルター」のオマージュ作品として楳図かずおの『洗礼』(1974年)をあげていることである。これは、よほどのコミック通でないと知られていない。
お話は...
永遠の聖美女とうたわれた女優・若草いずみ。だが、その素顔には醜いアザやしわが広がっていた。絶望のあまり狂乱するいずみに主治医の村上は何事かを告げる……。いずみは娘を産んだ。その後、彼女の行方は杳として知れない。時は過ぎる。ある街に母娘が睦まじく暮らしていた。醜い姿となったいずみと、美しく育った娘さくらである。失われた美と若さへの欲望にまみれたいずみの、悪魔のような計画が静かに進行していた...。
楳図作品は、整形云々というテーマに収まらず、美と醜の構図が正反対の概念ではなく、同じコインの裏表の関係であるということを暗に描いている。だから、美に対する執着が強ければ強いほど、醜さとともに美に近づけることになる。
是非、沢尻エリカ目当てで「ヘルタースケルター」を知った方も、楳図かずお「洗礼」を読んでみてほしい。
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