September 22, 2009
ガンダムへと続く、アトムの遺伝子。

日本動画興亡史 小説手塚学校 1 ~テレビアニメ誕生~
著者:皆河 有伽
販売元:講談社
発売日:2009-06-20
本書は、皆川ゆか 改め 皆河有伽さんの緻密な見識と慧眼をもって描かれたものだ。手塚治虫が、いかにアニメに挑んだのかという歴史ドキュメントである。本書は、拙著「これでいいのだ14歳。」と同じ編集者の手によって同時期(2007年初頭?) にスタートした企画であった。ワタシは赤塚不二夫の生き方を、皆河さんは手塚治虫の挑戦をテーマにしていて、しかし皆河さんの圧倒的なアニメに対する想いは、ワタシの熱情の百万馬力倍違っていたのだろう。
本書は手塚治虫が、東映動画(現:東映アニメーション) の「西遊記」で直面した憧憬と決別からディズニー映画の相克。そして、自らの信じる方法による虫プロダクションを創業するまでを実に生き生きと描いている。それは歴史にあった事実、という以上に物語性を孕んでいるのだ。すべての登場人物に対する愛情は皆河さんのアニメへの愛が土台となっている。ドキュメントの体を借りながら、皆河さんの筆はこの本のための登場人物であるかのように立ち居振る舞う。
全2巻は、虫プロが国産初のアニメシリーズを軌道に乗せたとこまで描かれている。この後の刊行もたいへん楽しみだが、現在のところ一切続巻の知らせは入っていない。聞けば、15巻分以上の原稿が存在するらしい。
ディズニーによるフルアニメーション(1秒12コマ)ではなく、リミテッドアニメーションとよばれる、コマ数の少ないアニメ技法の開発により、毎週制作をしなければならないテレビアニメ「鉄腕アトム」が生まれたのだ。苦肉の策から生まれた側面もあるが、「漫画はコマで人を喜ばせる。アニメであってもどうして良い絵を残さないのか」という手塚の信念により、それはチープな技法ではなく、日本の鳥獣戯画の歴史から脈々と伝わるDNAの再発見であったのかもしれない。
先日、亡くなった金田伊功さんも生前「良い絵は、4秒でも5秒でも使え」といっていたらしい。この絵の造形に対する感覚が日本のアニメを世界的な存在にさせたのだと思う。
すべてのアニメに関わる人に読んでもらいたい本である。
追伸: 第一章にでてくる白川大作さん(「西遊記」のプロデューサーであり、手塚治虫をアニメ業界に引き込んだ人物)は、ワタシが20代のころ たいへんお世話になった方である。担当編集の方の計らいで、20年ぶりにお会いすることができた。
当時、白川さんは博報堂でニューメディアを推進しておられ、同じくテレビの新しい道筋を模索していた若造のワタシによく食事を御馳走してくれたものだ。その白川さんが、東映時代に目をつけたのが、赤塚不二夫原作の「ひみつのアッコちゃん」アニメ化である。原作は、1962年-1965年まで集英社「りぼん」で連載されていたが、連載終了から4年 (1969年1月6日から1970年10月26日) もたって映像化されたのだ。
ということで、先日の銀座松屋で開催された「赤塚不二夫展」の会場で再会を果たしたのだ!近年の白川さんは、水彩画の先生をされ、奥様 (アトム制作時 虫プロに在籍、詳しくは本書参照) と世界各地を旅する生活をされている、とのことでたいへんお元気で優雅に暮らしていらっしゃるようだ。本当に嬉しい再会だった。


