July 26, 2009
「私」が美しかった日々の旅
「BRUTUS (ブルータス) 2009年 8/1号」を読んでいたら、鉄道の特集だった。その中で、1970年にはじまった日本国有鉄道(現在のJR)のキャンペーンとして制作されたポスターが掲載されていた。
これは、岩手県西磐井郡にある奥州街道から中尊寺へ至る月見坂でロケされた広告。「美しい日本と私」というコピーは、川端康成氏によるものらしい。企画は、当時 電通の藤岡和賀夫、カメラマンは同社 飯塚武教。
「BRUTUS (ブルータス) 2009年 8/1号」を読んでいたら、鉄道の特集だった。その中で、1970年にはじまった日本国有鉄道(現在のJR)のキャンペーンとして制作されたポスターが掲載されていた。
これは、岩手県西磐井郡にある奥州街道から中尊寺へ至る月見坂でロケされた広告。「美しい日本と私」というコピーは、川端康成氏によるものらしい。企画は、当時 電通の藤岡和賀夫、カメラマンは同社 飯塚武教。
作家のおやつ (コロナ・ブックス)
販売元:平凡社
発売日:2009-01
シズル感のある本が面陳されていたので見てみた。文豪こだわりの一品をまとめたムック本。
やはり気なったのは、三島由紀夫の好みである。三島が尊敬した川端康成が好きだった駒込のフランス菓子店「CADOT」(カド)のプチ・ガトーが三島の好物でもあったらしい。この店は、東京農大卒業後1956年に高田壮一郎氏という菓子職人が戦後最初の政府認可私費留学生として渡仏し、今はなきパリの老舗菓子店「CADOT」でお菓子の勉強をした。その後オーナーシェフとして修業を積んだ後、1960年に帰国して開業したお店。つまり、日本の洋菓子界発祥の店といっても過言ではない。
川端康成「眠れる美女」
生意気なティーンの時になぜか邦画と日本の作家を馬鹿にしており、ルイス・ブニュエルとガルシア・マルケスは大ファンだったが、黒澤明と川端康成にはまったく関心が無かった。いま思えばこれもまた若気の至りである。
マルケスの新作「わが悲しき娼婦たちの思い出」の冒頭に本作の江口老人に対するオマージュが書かれている。それがずっと気なっていて初めて川端作品を読んだ。
江口老人は老境に差し掛かり、処女で眠らされている女性がいる海岸沿いの宿で生の精気を取り戻そうとする。そこは、売春宿などではなく、女性達はただ眠らされているだけなのだ。お互い素性もわからなければ、会話もない。江口老人はひたすら、生に執着しているようにみえて、実は死後を見据えている。死を覗けば覗くほど、生がぼんやりと過去から襲ってくるのだ。これほどの虚無感をデカダンなムードなしに精緻に描いてみせる川端康成氏に脱帽。