June 12, 2011
日加国際共同製作アニメ『マイブリッジの糸』(2011) -監督:山村浩二:「映画を撮ること」/「射殺すること」="Shoot"
日加国際共同製作『マイブリッジの糸』(2011)
監督:山村浩二
「年をとった鰐」「頭山」「カフカ 田舎医者」など、ぜんぶ大好きなアニメ・クリエイター山村浩二監督が前作から4年の歳月を経て新作アニメ『マイブリッジの糸』を完成させた。そのプレミアム試写会が、2011年5月25日にカナダ大使館で開催されたので、行ってきた。
新作は、写真家エドワード・マイブリッジ(Eadweard J. Muybridge 1830 - 1904年 -イギリス写真家)の人生をモチーフに約13分で描いている。尺数だけきくと短い感じはするが、その手法、技法、なにより監督の創造力が濃密にはいっており、2度試写されたが、もっと何度でも見たかった。たいへんな作品である。
マイブリッジは1872年、元州知事リーランド・スタンフォードとは馬の脚運びについて4本全ての脚が地面から離れる瞬間があるかないか賭けをした。それを証明するためにスタンフォードはマイブリッジに2,000ドルで写真の撮影を依頼したのが、有名な連続写真なのである。
1秒で約17メートル移動する馬の一瞬を撮影するために、定点ごとに糸をつけ馬が通り過ぎるたびにシャッターがきられる仕組みを考案した。結局5年の年月と5,000ドルを費やし、1877年の7月1日に一枚の写真を撮影、賭けに決着をつけた。
ここまでは有名な話だが山村監督は、単にアニメ技術のエスタブリッシュメントとしてのマイブリッジだけではなく、彼の人生そのものに魅せられていく。マイブリッジは、1874年10月17日、妻の愛人であるハリー・ラーキンス少佐を射殺した。 殺意が明らかであったにもかかわらず、裁判では正当防衛として無罪となった。 彼は判決後、中央アメリカへ去った。
「射殺すること」と「映画を撮ること」がともに"Shoot"という言葉を使うことに共通性を見出し、いずれも時間との関連、時間を操作したい欲望との関連を重要なモチーフにしたとのことだった。
今秋 東京都写真美術館で公開予定なので、クリエイティブにかかわる人は絶対必見!