堀江邦夫

October 29, 2011

ルポ『福島原発の闇 原発下請け労働者の現実』 (著者:堀江邦夫 イラスト:水木しげる) :退治できずに放置していたコントロール不可能な化け物…それは人間自らなのだろう。

IMG_0002福島原発の闇 原発下請け労働者の現実
著者:堀江 邦夫
イラスト:水木しげる
朝日新聞出版(2011-08-19)










本書は、いまから32年前に「アサヒグラフ」(1979年10月)に掲載された堀江邦夫さんのルポルタージュである。著者は自ら、美浜、福島第一、敦賀原発で下請け労働者として働き、その体験を「原発ジプシー 増補改訂版 ―被曝下請け労働者の記録」として発刊。その執筆中に編集者からその一部を雑誌に発表しないかということで、漫画家 水木しげるも同行し、取材の旅に出た。

そして、現在...2011.3.11以降の日本の原発状況を鑑み、復刻されたわけだ。ここで描かれている過酷、苛烈な労働状況は、報道で漏れ伝わる様子と合致し、実は30年以上にわたって...それは、私が中学2年生で「スターウォーズ」に熱狂したり、「セックスピストルズ」に狂乱していた その時期から同じ状況であったというに過ぎない。

原発の安全神話は、完全に宣伝費や利害関係者への報償で形成されたものであり、私たちは知らされていなかった...。いや、正確にはこうして世に出されていたのもかかわらず、無関心でいたのかもしれない。

堀江氏は、実際には働いている奥地の現場をみていない水木が、これほど精緻に迫力をもってイラストを描いていることに驚嘆している。

このルポは、単に原発の恐ろしさを訴える本ではない。こんな、この世に生きている政治家、企業、人々がコントロール不可能な化け物を退治できずに放置していたことの自らの無責任さを露呈させたものなのである。

脱原発でも反原発でもなく、長期にわたる電力不足を覚悟の上で原発の即時停止を強く求める。

tabloid_007 at 17:02|PermalinkComments(0)