佐々木俊尚

August 01, 2011

『キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる』(著者 佐々木俊尚):ネットが個人をスコープさせ、より自分自身の言葉で語ることが大切になる時代

IMG_0005-jiuhキュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)
著者:佐々木 俊尚
筑摩書房(2011-02-09)












遅ればせながら、珍しくビジネス本っぽいものを読んだ。もともとは、著者のツイッターで知った本書だが、改めてバイラル効果で買ってしまった自分の消費行動の変化に驚きつつ、本書から自分に役立った部分を引用&要約。

・ 【ビオトープ】 情報が共有される圏域がインターネットによってどんどん細分化され、そうした圏域を俯瞰して特定するのが難しくなってきている。郊外の空き地や雑木林の中や、あるいは田んぼのあぜ道のあたりにひっそりと形成され、小さな生態系をつくっているイメージ。

・ 【アテンションエコノミー】 マスメディア時代はのコンテンツに対する飢餓感は消滅し、さらにポッドキャストやYouTube、USTREAMなど音声と動画でもコンテンツの数は増えた。人々の持っている時間は有限で、その有限の時間をいただくためにどう注意を惹きつけるかという考え方が注目を集めるようになる。

・ 【応援消費】(博報堂『広告』2010.10)「ひとりでコツコツ作っている職人の革製品が好きで、定期的に買い続ける」など商品を買いたいという欲求だけでなく、作り手が持っているポリシーや、購入することで作り手に「良いこと」として伝わることが加味されて、お金を払う行動。自分のライフスタイルや作り手の哲学に共鳴・共感したモノにお金を使う。

・ 【機能消費】 高級車はムダ。車は単なる移動の手段。ユニクロ、H&Mのようなファストファッション。牛丼やマックのようなファーストフード。シンプルで機能的なら充分という考え方。マスメディアが演出した記号消費がなくなっていく一方で、消費が本来生息していた懐かしい「つながり消費」へ。iTunesのアフィリエイト広告は、儲けのだめでなく、誰かが自分の紹介でモノを買ってくれたという感慨のために行っている。

・ 【所有時代終焉】 記号消費の衰退。クラウドとシェアによる「所有しない」という新しい生き方。そして、人と人のつながりを最も大切だと考える若い人たちの台頭。日本古来の「清貧思想」とつながっている。マスメディアはこれを草食系で気概がないと非難するばかり。消費さえも不要である無所有の方向性。「つながり」を求める場はモノの購入ではなく、何かを「行う」という行為へと変移していく。「行為」や「場」の消費。

・ 【主客一体】 日本文化がはぐくんできた相互コミュニケーションがいたインターネットの場で成立する可能性がある。ネットがある程度価値観や興味を共有した人々をつなげるからだ。ブログのコメントやツイッターの呟きの連鎖の中には、すでにこうした関係が存在する。

・ 【エンゲージメント】 「企業か個人か」といった「だれが主体なのか」という枠組みは融解している。言い換えれば企業も個人もひとつの独立したキャラクターとして人格をもって語られなければ、エンゲージメントを誰かと生み出すことはできない。自分自身の言葉で語っている存在だけが、お互いにつながることができる。

・ 大切なのは、将来出現してくるソーシャルメディアを軸とした情報の流路がどのような全体像になっていくかというビジョン。

以上。非常に示唆に富んだ本だった。

tabloid_007 at 11:13|PermalinkComments(0)

August 09, 2010

「IT批評」 創刊号: 佐々木俊尚氏「氷河期を生き延びた小型の哺乳動物のような基礎代謝、損益分岐点の低い小規模な出版社は生き残る」

ITIT批評 創刊号
販売元:眞人堂株式会社
発売日:2010-06-28










面白い雑誌が創刊された。佐々木俊尚氏の「出版の定義を変えるIT」という巻頭特集が興味深かった。

下記抜粋
佐々木氏「氷河期を生き延びた小型の哺乳動物のような、基礎代謝、すなわち損益分岐点の低い、小規模な出版社は生き残る。」

tabloid_007 at 00:05|PermalinkComments(0)

December 20, 2009

新聞は消滅しない!...と思う。

TELEVI2011年新聞・テレビ消滅 (文春新書)
著者:佐々木 俊尚
販売元:文藝春秋
発売日:2009-07

 

 

 

 

 

天の邪鬼だから、こういう本読むと単純に信じない。逆を考える。

全体としてはそうかもしれないが、ワタシはタブロイド紙などある種のターゲットがはっきりした新聞に楽観的な希望をもっている。。移動手段が電車中心の都市部では、30-40代ビジネスマン向けタブロイド紙は必要不可欠な情報源である。120円で駅で買い、降りる頃には丸めて捨てられる。これがキンドルやE-インクなどの今後のメディアでは絶対できないビジネスモデルなのである。地球には優しくないかもしれないが、失くしても平気である。あのランダムアクセス。あの気軽さ。あの値ごろ感。すべてがいま電子書籍の未来を占う評論家の意表をつくところなのではないか。

いずれにせよ、若年層が中年になっても老眼はくるだろうから、ビジュアル満載のタブロイド紙は、今後も無くなることはないと信じている。



tabloid_007 at 20:40|PermalinkComments(0)TrackBack(0)