February 13, 2010
何かを禁止することは、禁じられた行為に それ以前になかった意味を与えることになる
絶頂美術館
著者:西岡 文彦
販売元:マガジンハウス
発売日:2008-12-18
最近読んだ美術関連の本では最高に娯楽要素の多い興奮した本だった。絵に隠された謎ときというより、歴史的背景を俗人的な視点で教えてくれる。
19世紀に描かれたヌードがなぜ神話をベースにしていたか。それは、宗教的な背景で現代のヌードが描けなかったからだ。ゆえにカバネルの「ヴィーナスの誕生」(1863年)の気品溢れる作品でさえ、よーく見ると足の指が反り返っており、これはセックスの絶頂を描いたものではないかと類推する。絵の見方も変わってくる。
日本ではネーミングが問題で無くなった「トルコ風呂」。これはドミニコ・アングルが描いた「トルコ風呂」(1863年)の艶めかしい様子からきたものと思われる。しかし、アングルは、実際のトルコ風呂でこれを描いたのではない。英国トルコ大使の夫人モンタギューが、トルコの公衆浴場で数百人の全裸女性がコーヒーやシャーベットを食べながら入浴を楽しんでいたことを固いコルセットをする英国人として仰天した日記からインスピレーションを得て描いた。どおりで破廉恥なイメージになるわけだ。
例えば、一筆描きの点しかないような作品が高額で取引されることがある。現代の前衛的な絵画の売買が成立するまでには歴史があった。19世紀は、まだ映像関連素材の普及がないので、基本は絵画がいかに写実的な手法で手間をかけ表現できるか、ということに主眼が置かれていた。
画家ホイッスラーが英国皇太子も出席する画廊のオープニングに「黒と金色のノクターン:落下する花火」(1875年)を出品した。この絵を見た、批評家ラスキンが「絵の具の壺をぶちまけたような絵を買うものはいない」と批判。裁判になった。法廷の尋問でラスキン側弁護士が「あなたはこの絵を何日くらいで描いたのですか?」という問いにホイッスラーは「二日もあれば充分です」と応え、廷内の失笑をかったといわれている。弁護士「たった二日の絵に400万円は高すぎと思いませんか?」と再度質問。ホイッスラー「いいえ、それ以前のすべての人生を費やして得た知識と経験に対してです」と返答し喝采をあびた。ホイッスラーは勝訴した。
他にも美術愛好家でなくても本書は面白いエピソードや著者である西岡文彦さんの知見がいっぱい散りばめられている。必読書である。
ちなみに、表題は思想家ジョルジュ・バタイユの言葉である。
著者:西岡 文彦
販売元:マガジンハウス
発売日:2008-12-18
最近読んだ美術関連の本では最高に娯楽要素の多い興奮した本だった。絵に隠された謎ときというより、歴史的背景を俗人的な視点で教えてくれる。
19世紀に描かれたヌードがなぜ神話をベースにしていたか。それは、宗教的な背景で現代のヌードが描けなかったからだ。ゆえにカバネルの「ヴィーナスの誕生」(1863年)の気品溢れる作品でさえ、よーく見ると足の指が反り返っており、これはセックスの絶頂を描いたものではないかと類推する。絵の見方も変わってくる。
日本ではネーミングが問題で無くなった「トルコ風呂」。これはドミニコ・アングルが描いた「トルコ風呂」(1863年)の艶めかしい様子からきたものと思われる。しかし、アングルは、実際のトルコ風呂でこれを描いたのではない。英国トルコ大使の夫人モンタギューが、トルコの公衆浴場で数百人の全裸女性がコーヒーやシャーベットを食べながら入浴を楽しんでいたことを固いコルセットをする英国人として仰天した日記からインスピレーションを得て描いた。どおりで破廉恥なイメージになるわけだ。
例えば、一筆描きの点しかないような作品が高額で取引されることがある。現代の前衛的な絵画の売買が成立するまでには歴史があった。19世紀は、まだ映像関連素材の普及がないので、基本は絵画がいかに写実的な手法で手間をかけ表現できるか、ということに主眼が置かれていた。
画家ホイッスラーが英国皇太子も出席する画廊のオープニングに「黒と金色のノクターン:落下する花火」(1875年)を出品した。この絵を見た、批評家ラスキンが「絵の具の壺をぶちまけたような絵を買うものはいない」と批判。裁判になった。法廷の尋問でラスキン側弁護士が「あなたはこの絵を何日くらいで描いたのですか?」という問いにホイッスラーは「二日もあれば充分です」と応え、廷内の失笑をかったといわれている。弁護士「たった二日の絵に400万円は高すぎと思いませんか?」と再度質問。ホイッスラー「いいえ、それ以前のすべての人生を費やして得た知識と経験に対してです」と返答し喝采をあびた。ホイッスラーは勝訴した。
他にも美術愛好家でなくても本書は面白いエピソードや著者である西岡文彦さんの知見がいっぱい散りばめられている。必読書である。
ちなみに、表題は思想家ジョルジュ・バタイユの言葉である。
tabloid_007 at 23:08|Permalink│Comments(0)│