May 15, 2011
ホンマタカシ写真展『ニュー・ドキュメンタリー』:世界中のマクドナルドを映した[M]シリーズは傑作!
ホンマタカシ ニュー・ドキュメンタリー
2011年4月9日(土)― 6月26日(日)
東京オペラシティ アートギャラリー
新宿区西新宿3丁目20−2
03-5353-0756
写真家 ホンマタカシの大規模個展である。全部で、6つのチャプターから成り立っている。以下、解説からの引用。
[Tokyo and My Daughter]
ホンマ自身が娘の成長を記録した家族アルバムを思わせるタイトルだが、実際は異なる。少女はホンマの子供ではないし、さらに少女の家族が撮った写真(いわゆるファウンド・フォト found photo=見いだされた写真)の複写も混じり込んでいる。こうして見る側の先入観や期待は巧妙にずらされ、やがてはっきりと揺らぎ始める。しかし時代の空気のようなものは揺らぐことなく、明瞭に浮かび上がる。
[Widows]
イタリアのジェノヴァの東30キロの町ラパッロに住む11人の未亡人、その住まいの中や周辺、さらに彼女たちのアルバムからとられた古いスナップ写真の複写からなるシリーズ。2010年に写真集として発表されたときは婦人たちを一人ずつ順々に紹介していたが、今回の展示ではそれらを自在にシャッフルし、個人における過去と現在というより、ラパッロの町と文化、そこでの記憶という問題を静かに浮かび上がらせている。
[re-construction]
写真を発表する場として、雑誌や広告を積極的かつ意識的に重視してきたホンマが、それらの写真をみずから再撮影、再編集して本の体裁にまとめた新作。現代社会で写真は様々なメディアにのってはじめて大きな影響力を行使するといえるが、同時に写真は常に様々な文脈にさらされ、そのつど変容を余儀なくされる。そうした状況に対するホンマのいわば自己言及的な関心が見て取れる。
[Together: Wildlife Corridors in Los Angeles]
ホンマは映像作家のマイク・ミルズとともに、ロサンゼルス近郊の野生動物の生態を調査するプロジェクトを2006年に開始した。ハイウェイの通る荒涼とした風景がつづくが、個々の撮影は、生態観測のためのレンジャーが野生のマウンテンライオンに取り付けたGPS発信器のデータにもとづき、実際にマウンテンライオンが通った場所で行われている。
[Trails]
《Together》のシリーズと同じく、野生動物への関心が起点となっている。つまりホンマは北海道の知床の地で鹿狩りに随行し、その狩りにまつわる場面を撮影したという。けれども鹿の姿はいっこうに現われない。そもそも、白い雪の上に残るのは、果たして動物の血なのか、それとも絵具か何かなのか? シリーズに加えられたドローイングによっても、かえってその謎は深まるばかりである。
[M]
各地で撮影を続けてきたファーストフード店の写真をシルクスクリーンにした新作。誰もが知っている共通のロゴのもと無機質な店舗が世界中に拡散している状況は、たとえば郊外風景を撮影するときのホンマの視線と感応しあう。また、複製技術としてのシルクスクリーンは、無限に増殖するファーストフード店のあり方に通じている。
私が見たかったのは、この[M]のシリーズである。先日の「CHIYODA3331」でも気になった古いアメリカ雑誌のようなテイストが面白い。[M2] (2011,ED 500)
世界中のマクドナルドを映した[M]シリーズの第二弾。500部限定で表紙のシルクはすべて制作過程の起きた版ズレした失敗作を使用。