ハロルド・ピンター

January 03, 2010

女と男の際限ない話の終わり

51V3P48398L迷宮のヴェニス [VHS]
出演:クリストファー・ウォーケン
販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
発売日:1993-02-21









1990年に製作された映画を20年後の2010年に観た。はやくも今年のベスト・ムービーと思う。イアン・マキュアンの短編小説を大好きなハロルド・ピンターが脚本にした。監督は、ポール・シュレイダー。主演のナターシャ・リチャードソンは、昨年不慮の事故でなくなっている。不思議なビジネスマン役にクリストファー・ウォーケン。威厳をもって自分の父と祖父を語るかと思えば、突然暴力的になったりする。

ピンターの脚色らしく、再婚を考えて彼の地に来たカップルは、謎の男と再現ない無駄話を続けたり、突然話が変わったり、辻褄が合わなくなったりする。

こういう面白い品が今や絶版になっているばかりかDVDにもなっていないというのは如何なものだろうか。でも、Amazonのユーズドで1円で買える!



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January 04, 2009

子どもを産む機械はいない

handmaids_tale-3 闇の聖母〜侍女の物語〜 [VHS]
出演:ナターシャ・リチャードソン
販売元:松竹ホームビデオ
発売日:1992-01-21

 

 

 

 

 

先月のクリスマスに亡くなったハロルド・ピンターの脚本作品を探していて見つけた作品。カナダのベストセラーSF「侍女の物語」(著:マーガレット アトウッド)の映画化。ワタシの大好きな「ブリキの太鼓」などを撮ったフォルカー・シュレンドルフが監督し、坂本龍一が音楽を担当している。にもかかわらず、DVD化はしていない不思議。久しぶりにVHSで観た。

少子化が極端に進んだ近未来。妊娠可能な女性は政府の管理下でお産が進められる、というもの。昔の社会主義風刺のテイストでちょっと古臭い。



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April 29, 2008

あなたって素敵ね!なんで?だって...

フランス軍中尉の女

先日から、ワタシの勝手なシリーズとして、ノーベル文学賞ハロルド・ピンターが脚本を書いた映像作品を入手可能なものから観ている。

これは、メリルストリープとジェレミー・アイアンズが主演。英国ビクトリア朝時代に“フランス軍中尉の女”とさげすまれた一人の女性の物語を現代の俳優が演じるという二重構造のラブ・ストーリー。監督は「ドッグ・ソルジャー」のカレル・ライス。..

それにしても、フランス軍中尉の恋人だっただけで、村では差別されるなんて随分な時代もあったものだが、その辺りの実感が共感できないと何だか古臭く物語に感じてしまう。

現代の俳優の場面で、ダブル不倫関係にあるメリルとジェレミーの妻とのホームパーティの会話がピンターらしいギクシャク感がでていて良かった。



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March 16, 2008

言葉が人間を動かすスルース

truthSLEUTH
「スルース」(2007年)は、「探偵スル−ス」(1972年)のリメイクである。前作は、ローレンス・オリビエとマイケル・ケインが競演だったが、35年の月日を経て、今度はマイケル・ケインがローレンス・オリビエの役割を担い、ジュード・ロウが相対する。
一番大きな違いは脚本である。そう、ワタシの大好きな戯曲作家であるハロルド・ピンターが書いているのだ。これだけで劇場に行く意味がある。そして、監督はケネス・ブラナー。もういうことない布陣。
 
二人の男がロンドン郊外の邸宅の中で、心理戦を行う、一切の舞台装置は必要ないかにみえる。ピンターのオリジナルではないかと思えるくらい緊迫した二人の男の掛け合い。騙す方が騙され、騙される方は、それを予見してまた騙そうとする。しかし、これは謎解きやどんでん返しなどの趣意はなく、あくまで二人の男の関係性、主従関係、愛憎関係、愛情関係を提示し続ける。終わりのないゲームのような対話の中で新しい関係は見つけられるのか。そもそもこれは解決のための会話なのか。誰にもわからないし、目撃者はただその成り行きに拘束される。

http://www.sleuth.jp/
http://www.sonyclassics.com/sleuth/



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March 09, 2008

どうしても気になる美人留学生に教授は...

accident-1できごと
昨年、ノーベル文学賞を受賞したハロルド・ピンターが脚本を書いた1967年の作品。既に絶版になっているので、中古で買った。当時、カンヌ映画祭で審査員特別賞をとった作品なのにこの体たらくである。

内容は、ダーク・ボガード扮するオックスフォード大の哲学教授がオーストリアからの美しい留学生アンナ(ジャクリーヌ・ササール)に惹かれるが、彼女には婚約者がいるばかりか情人までいたのだった。それでも教授は...ってな話。知識階級の腐敗というのは、いまは常識的なテーマだが、テーマに対する内容よりも描き方のディテールが面白い。

アンナと教授の同僚である情人がいた自分の家に朝帰りした教授は、突然と腹がへったとして、オムレツを作り出す。重苦しいキッチンの3人。こういうシーンが随所にあって不思議な緊迫感を作り出すことに成功している。

ちなみに、これから公開するジュード・ロウが主演するイギリス映画「スルース」の脚本もハロルド・ピンターです。http://www.haroldpinter.org/



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February 06, 2008

何も起こりはしなかった...ことにしなかった

314ioTHVs1L__SS500_何も起こりはしなかった―劇の言葉、政治の言葉 (集英社新書 384A)














イギリスの劇作家ハロルド・ピンターのノーベル文学賞受賞記念講演やガーディアン誌などに掲載された過去の政治コラムを収録した単行本である。

特に、アメリカに対する批判は強い調子で語られる。民主主義を守るという面目で南米や中東で罪のない市井の人々を何十万人殺せば気が済むのか。アメリカが国際法や国際司法裁判所の判決をまったく無視し続ける歴史に対して、残りの世界が圧倒的な軍事力に屈服させられているとピンターはみている。

ニカラグアなど数々の独裁政権へのポジティブな関与、大量虐殺へのアドバイスなどまったく報道されない死者の数や事件にたいして、「何も起こりはしなかった」ことにしていることを絶対彼は許さない。そのことを知り伝えることでムーブメントになると信じている。共鳴。



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January 12, 2008

ウェーは、あなたにもなりうる奴隷なんです

UWE舞台『ウェー』(作・演出 : 安部公房)

 

 

 

 

 

 

もともとは、「どれい狩り (新潮文庫)」という小説があり、それを1975年に友人であった西武デパートのオーナーであった堤清二(当時)が資金と場所(西武劇場)を提供し、「ウエー―新どれい狩り (1975年)」という形で実現したお芝居である。

その当時のパンフレットをオークションで落札した。幼少期から小説も戯曲も読んでおり、実際の映像も見たことはないので、パンフレットの写真だけが頼りだが、公演前に作成するので結局稽古の様子しか写ってなかった。

だが、萩原延壽氏が安部公房をロンドンに案内し、劇作家のハロルド・ピンターと会食している、というエピソードは拾い物だった。それが後年の安部公房スタジオでの「ダムウェイター」の演出につながったのかもしれない。



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