March 20, 2018
ブロックチェーンがテレビを変える!

月刊誌『B-maga』(2018年3月号)に長期連載させてもらっている。今回で「考えるメディア」も190回目。ブロックチェーンの時代が到来したらテレビ局はどうなるのか考察してみた。
電子版でも月ごとに読むことができますよ。
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プラットフォームのブランディング
テレビ局がテレビ局たらしめているのは、3つの要素がある。一つは、良質の番組を作る。もう一つは、番組を編成する。そして、放送免許をもっているというのがある。
日本では、放送免許を失効するという事態は、殆どおきない。UHF局であるKBS京都が潰れかかった時でさえ免許は維持できた。だから、1994年にパーフェクTVが開業する際には、これは新たな利権と不動産屋から地方の金持ち、政治家などがあらゆる形で放送免許をとろうとやっきになったのだ。
しかし、放送免許はなんでも価値があると思ったら大間違いで、衛星放送の免許となると、もっていても受け皿の加入者がパラボラアンテナをつけてないと加入できないし、大抵のチャンネルは有料放送でお金を支払わなければならないので、加入者が増えないという状況がずーと続いている。
さて、話を地上波テレビの事業構造に戻そう。
世界中でいろいろな職種があるが、放送局ほど仕入れ(総務省からほぼ無料で電波がもらえる)が無料で大きな収入を得ている業態はない。
八百屋だって建築メーカーだって原材料である仕入れのコストが経営を左右するはずだ。だが、テレビ局は、作るだけで仕入れコストはかからない。だから、人材なんだよと力説するテレビ局経営者もいるが、その番組の大半を外注ですませている。まるで商社みたいだねっていう人もいるが、商社の仕事はそんな甘くない。何もないところから原材料を見つけて育てて販路を見つけて、やっと手数料が数パーセント。それと比べたら、テレビ局ほどおいしい商売はない。しかし、その半世紀以上エンジョンしてきたビジルスモデルも崩壊しようとしている。ネットメディアによる追撃により、徐々にその聖域が侵されようとしているのだ。
まず、ネットフリックスやHuluのようなオンラインで、周波数を使わなくとも番組が配信できるようになり、免許のありがたみが薄れた。
また”編成権”が意味をなさなくなった。局の配列する編成時間に合わせなくても視聴者の時間にあわせたオンデマンド視聴が普通になったからだ。テレビ局でいう編成は、視聴者の千万単位のデータを解析し、日々グロースハックして、視聴者のカスタマイゼーションを行なっている。
さらに今後は、仮想通貨で話題になったブロックチェーン(英語: Blockchain)がネットフリックスなどのインフラ構造を破壊するかもしれない。ブロックチェーンとは、分散型ネットワークである。ビットコインの中核技術(Satoshi Nakamotoが開発)を原型とするデータベースで、全く新しい分散型のコンテンツ配信モデルを実現できる。ブロックチェーンは、世界中のコンピューターをP2Pネットワークで結び、中核的なサーバーや機関は存在しない。
現在のネットフリックスのようなオンライン配信は、テレビ局でいう放送免許(周波数)と同様に中央集権的なサーバーで運用されており、その配信手法も時代遅れになる可能性があるということだ。
今までは、コンテンツ制作者は、テレビ局や大手オンライン配信の中央集権的なインフラの力(周波数、サーバー)により屈服させられていた。
コンテンツを巨大なサーバーに置いてもらい、米アカマイ・テクノロジーズやアマゾン・クラウドフロントなどのコンテンツ配信ネットワーク(CDN)を使って配信してもらう。どのコンテンツをいつ、どんなルートで配信するのかという判断は、依然として独占的なプラットフォーマーに委ねられている。
しかしブロックチェーンでのコンテンツ配信が一般的になると、中央集権インフラではなく、ラストワンマイルの分散型インフラが配信を制することになる。究極はそれぞれのスマホが巨大なテレビ局になる。
そのような時代が来ても、テレビ局やオンライン配信がメジャーであり続けるためには、良質のコンテンツを制作し、ライセンスしてもらうことでブランディングしていかなけれはならない。
良質のコンテンツを作り、AIを活用したグロースハックを駆使し、ラストワンマイルの分散型インフラを構築できるオンラインテレビ局こそが次世代を制するだろう。
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