August 23, 2015
S氏の何がいけなかったのか?

1,380文字(読了まで3分)
東京オリンピックのエンブレム問題が一向に収束しない。そのデザインが盗作や否やということは、ここでは触れない。
私が関心をもっているのは、近年これほどネットメディアが主役だった事案はなかったというところなのだ。すべての情報発信が「ネット発」なのである。
ロゴデザインを知った他国のデザイナーがツイッターを使ってS氏を挑発してきた!とか、それをきっかけにネット民が、その他の作品までグーグル画像検索を使って調べた。挙句の果てには、コンペまでの人物相関図まで暴露された。従来のメディアでは、唯一「日刊ゲンダイ」だけが、S氏会社の広報担当である妻に直撃取材してスクープをものにしている。(本人名義のデザインが、実は部下がやったと発言)
テレビ・雑誌は後追いの形をとっている。ネットメディアからの情報は真贋入り乱れるが、テレビや雑誌よりはるかに高い検証能力がある。(我々は、大手新聞社がねつ造した歴史的事件を長年検証できなかった。)
メディア王・ルパード・マードックが出資するニュース検証サイト「Storyful」では、ほとんどのインテリジェンス情報(国家機密)は公開されているネット情報から得ている。たとえば、中東のテロの拠点や装備武器の情報をちょっとしたユーチューブの画像の端から解読したりするのだ。その情報をネット民の集合知を活用して調べる。(クラウド型という)
このようなネット社会において、S氏は、その危機管理をよく理解していなかったことが、本質的な話以上に騒ぎを大きくしたことは否めない。
会見での発言が次々とネットで検証されまくった。「ピンタレストを見たことがない」といったことで、そのアカウントが探し出され、見つけ出され、削除の魚拓がとられた。そのアカウントが本人のものかどうかの検証は行われていないようだが….。それ以降、毎日ゲーム感覚でS氏の過去の仕事が検証されていく。トートバックのデザイン、動物園、美術館のロゴ…などなど。ネットが暴き出し、テレビ局が取材に行って、それがまたネットで拡散する無限地獄…。
つまり、S氏に足りなかったのはデザイン能力ではなく、ソーシャル能力なのだと思う。
SNS時代の危機管理対応についての知識がなさ過ぎた。このネット時代にピンタレストを見たことがないデザイナーの在り方がどうかと思われるし、工房型の仕事(アンディ・ウォーホルや赤塚不二夫などがとっていたやり方)だと、部下のデザインを監修する段階で画像検索などの知見はマストと思う。
知財(著作権管理・保護)の観点では問題ないのに、ネットゴシップ的には、格好の餌食になってしまった。そして、それがS氏の今後の仕事にも悪影響を及ぼすかもしれないとすれば、こんな悲劇はない。ぜひ、いまからでも遅くないので、メディアへの反論ではなく、自分への共感をどう作り出すかという新しいソーシャル戦略を打ち立てるべきと思う。優秀なデザイナーの方と思うので、今後十分名誉回復のチャンスがあると信じている。
追伸:BEACHのデザインをした米国クリエイターの過去作品もパクりじゃないか、というネット記事は秀逸だった。現代のネット社会においては、フォトショで簡単に作り出せるパロディがオリジナルを上回る作品もあるし、「オリジナルの概念」を再定義したほうがいいのではないか。
「デザイナー佐野研二郎氏の諸問題について」(2)デザイナー諸氏へ
橘川幸夫
「歴史の初稿」をネットユーザーが伝え、ジャーナリストが確認する
画像解析技術の進化でパクリ画像の特定はカンタンに
tabloid_007 at 11:46│Comments(0)│


