April 24, 2011
小説『生ける人脳図書館』 (1931年「科学画報」連載): 他人の脳を平気で借りる時代!
小説『生ける人脳図書館』
1931年(昭和6年)「科学画報」3号連載
訳:寮佐吉
作:D・H・ケラー
少し前のことであるが、作家の寮美千子さんのツイットでこの作品のことを知り、さらに祖父さまである寮佐吉さんのお仕事に興味をもった。早速、寮さんに無理をいってコピーを見せて頂いた。下記、サイトからの抜粋。
寮佐吉さんは、大正末期から昭和初期にかけて、科学ライターとして活躍。本業は府立四中の英語教師だった。寮佐吉さんの翻訳した本が、宮澤賢治の蔵書にあったらしい。
1945年(昭和20年)、終戦を待たずに肺結核で亡くなられた。
さて、この短編も奇妙な味わいのある作品である。
ある日のニューヨークタイムズ求人欄。エリート大学の卒業者に対して、ペンシルバニアの山荘 一か所に集められ5年間 専門的な本ばかり読む仕事が募集された。給与は毎年1万ドル(約100万円 −今のレートだと1千万円くらいか?) をが5年間支払われる。飲み食いや住居も提供されるが、5年間は親兄弟、友達との一切の交流を禁止されている。
集められた500人は、1年300冊読まなければならない。つまり5年間で延べ75万冊が読破されることになる。この規模は、当時の東京上野にあった帝国図書館の蔵書70万冊より多い規模となる。
以下、ネタバレ注意 ↓
この奇妙なプロジェクトは、大金持ちのチャールズ・ジェファーソンが考えた悪事だったのだ。その悪事とは、5年の間にたっぷりと知識を詰め込んだ若い頭脳を脳みそだけ取りあげて、システム化し最高の頭脳を自分のものにしようということだったのだ。
荒唐無稽なSFといえば、そうなのかもしれないが、考えてみたら人は5百人も殺してないが、インターネットという存在が同じコンセプトなのかもしれない。つまり、創作から70年経ち 私たちは知らずと他人の頭脳を間借りすることに慣れてしまったのだ。ヤフー知恵袋を使った大学入試カンニング事件など、それを象徴する事件だったのかもしれない。
いまこそ、自分の力で考える癖を取り戻さなければならないと自戒した。
追伸: 寮美千子さん、松永洋介さん 貴重な資料を教えて頂きありがとうございました!