November 07, 2010
DVD『P.S.アイラヴユー』:死者からの手紙は、残った者をしばし過去の時間に戻してしまう...。
P.S.アイラヴユー [DVD]
出演:ヒラリー・スワンク
ジェネオン エンタテインメント(2009-03-25)
どうも、日本のDVDパッケージが甘いロマンスものというようなデザインだったので、今まで観なかったがWOWOWで深夜にやっていたので、観ることにした。
本作は、セシリア・アハーンの小説を原作して、ヒラリー・スワンク、ジェラルド・バトラー、ハリー・コニック・Jrなど中々芸達者な役者が揃っていた。
お話は、マンハッタンに住むホリーは最愛の夫を亡くしてしまった。友人たちはホリーを元気付けようとするが、ホリーは幸せだった日々を忘れられない。 そうしたある日、ホリーに亡き夫から消印のない手紙が届く。それは夫からのメッセージで、プレゼントやアドバイスが次々に届けられていく。少しずつ元気を取り戻していくホリーは、そしてホリーは導かれるまま亡き夫と出会った彼の故郷であるアイルランドへ旅立つ。やがて最後の手紙を受け取る...。
死者からの手紙、というようなサスペンスタッチでは当然なく、脳梗塞で余命いくばくもない夫が、自分の死後を想像して最愛の妻に手紙を描き続けたのである。
さて、ここで死の在り方について考えてみた。普通、予期された死の場合、死んだ後のことを考えるとすれば遺産を中心とした遺言ということに終始されるが、この主人公は、死んだ後も生きている足跡を残そうとする。物語では、いかに亡くなってしまった自分からの忘却を妻に強いたとしても、どこかで自分を超える後世の存在を認めたくない、というとこもある。その死してなお...という部分が映画の描きたいところなのだろうが、自分が実際そうなったら、亡くなった時点からなるべく早く自分の痕跡を消したいと思う。もし愛され惜しまれて亡くなったのなら空白の時間のみが、生き続けている人々を癒すはずなのだ。死後の手紙は、残った者をしばし過去の時間に戻してしまう。それほどの未練を感じる愛の話ということなのだろう。